雇用創出


日本は「モノづくり輸出立国だ」と子供の頃から聞かされてきました。今日でも国際競争力を高めるためにはバイオやナノテクといった先端技術を強化する必要があると力説されている方がたくさんおられます。

世の中に貨幣というものが無かった太古の社会では、食料など生活に必要なものは自給自足と物々交換で得ていたと考えられます。実際、国内だけで生活に必要なものがすべて手に入れば、外国との輸出や輸入は必ずしも必要ないのではないかと思います。

しかし日本には資源や食料などが十分にありません。このため国内で不足しているモノを外国から買うために外貨を稼ぐ必要がでてきます。ここであたりまえのことなのですが...「国内で不足しているモノ」=「外貨」というバランスが大切なのではないでしょうか。

「国内で不足しているモノ」<「外貨」の場合はどうなるかといいますと、外貨は国内では使えませんので、外国への投資にまわるという図式が成立します。投資対象になった外国が潤うというわけです。日本人の生活には貢献しません。

また国際競争力を高めるために、日本の「モノづくり企業」は人件費をより低くできる中国やベトナムなどに生産の場を移転してきました。「外貨」を稼ぐための代償として「日本人の雇用」を切り捨ててきたわけです。

日本の「モノづくり企業」に、必要以上に「外貨を稼ぐ」役割を担わせるのはいかがなものでしょうか。確かに高度経済成長期には、たくさんの外貨が必要でした。当時は国内であらゆるモノが不足しており、内需がどんどん伸びていましたので、内需の拡大にあわせて海外のモノが必要になったからです。国内にモノが溢れている現在、はたしてどれだけの外貨が必要なのでしょうか。

日本の「モノづくり企業」に「雇用の受け皿」としての役割を求めるのでしたら、外貨を稼ぐための事業展開をやめさせることも必要かもしれません。これにより一時的には国際競争力が低下するように見えるかもしれません。

日本の人件費はバブル状態ではないでしょうか。必要以上に外貨を稼ぐのを止めることで、日本のモノづくり企業の人件費が安くなる。あるいはベトナムなどの人件費が日本並みになってくると思います。そうすれば外国で生産するメリットがなくなりますので、たくさんの工場が日本に戻ってくるでしょう。

以上のように原点に返って考えますと、これからの日本に必要なことは...

1.輸出により獲得する「外貨」は「国内で不足しているモノ」程度に抑える。
2.自給自足できるモノはできるだけ自給自足する。

この2点に集約できるのではないでしょうか。

介護などのサービスで雇用を創出するという意見もありますが...考えればわかると思いますが、サービス同士では物々交換が成り立ちません。モノがあってはじめて成り立つのです。

介護サービスは高齢化社会対策、あるいは高齢者が高度経済成長期に蓄えた資産を市場に引き出すための政策ではないのかと思うのですが。。。

このため、本来の雇用創出分野は、「地産地消」をキーワードとした「農業、林業、水産業」と「国内向け」の「製造業」ではないかと思いますが、いかがでしょうか。